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甘味果実酒/灰持酒

赤酒

熊本県で製造されている灰持酒を赤酒といいます。これは色が赤褐色であったことから来ているとのことです。現在は主に料理用やお屠蘇用に使われています。
熊本地方特産のお酒で、江戸時代には、藩の保護の下、肥後藩内で広く造られていました。夏目漱石の著「三四郎」には、「熊本では、赤酒ばかり飲んでいた。熊本の学生はみんな赤酒を飲む。」という一節が出てきますが、製造数量は、明治以降一気に減少してしまいました。
鹿児島、宮崎では、赤酒と同様の酒を、地酒(じしゅ)と呼んでいます。
また、出雲地方でも地伝酒(じでんしゅ)といって、赤酒と同じように木灰を添加するお酒が造られています。使用する木灰は、主に欅、椿、柳、茶などです。木灰は、強いアルカリ性の物質ですから、清酒のように加熱殺菌を行わなくても品質の保持ができるのです。
独特の香りと赤褐色の色合い、濃厚な甘味が特徴です。

甘味果実酒

お酒には、表示義務があり、法に則って所定の表示がされています。その中の一つに清酒とかウイスキーとかといったお酒の種類(品目)の表示があります。お酒の定義は、酒税法によって規定されていて、「甘味果実酒」もその一つです。
甘味果実酒というと一見甘いお酒を想像しますが、必ずしもそうではありません。
酒税法によれば、甘味果実酒とは、果実酒(いわゆるワイン。)に該当しないもので、(1)果実、果実及び水に糖類を加えて醗酵させたもの、(2)(1)の酒に糖類、香味料、色素、ブランデー等を加えたもの、(3)あるいは、(1)(2)のお酒に植物を浸してその成分を侵出させたものと定義されています。
このため、この定義に該当するお酒、例えば、ドライ・ベルモットのように辛口の酒精強化ワインであっても、お酒の表示は甘味果実酒となります。

サングリア

スペインの国民酒といわれる飲み物です。
スペイン産のワインをベースにして、これにオレンジやレモンなどの風味を加えたフレーバードワインの一つです。
アルコール度数も低く、爽やかで飲みやすいお酒です。

地酒(ジシュ)

地酒は、鹿児島県で製造されている灰持酒です。
薩摩の郷土料理である「酒ずし」では酢飯の酢の代わりに地酒を使います。
またさつまあげの風味付けにも欠かせないものとなっています。

シェリー

スペイン南部のフラメンコ発祥の地、アンダルシア地方のヘレス地域を中心に造られるフォーティファイド・ワインです。
極辛口から極甘口まで、淡い麦わら色から濃い褐色まで、アルコール分は18~20度くらいで、多くのタイプがある特殊なワインです。スペインではヘレスといいます。
シェリーは全て白ワインから造られます。主たるぶどうは、伝統的な白色系ぶどう品種であるパロミノで、ペドロ・ヒメネスなども使われます。完熟したぶどうを収穫し、天日で乾燥させて糖度を上げ、搾汁し、焼石膏土を加えて醗酵させるのが一般的です。
醗酵終了後、ブランデーを加え、樽によるソレラシステム(十数個の樽を1組みとし、3~5段に積み重ね、最も上の樽に新しい酒を入れ、下段にいくほど古くなる。びん詰めは一番下の樽から。取り出した分を上の樽から順次補充する仕組み。)という独特の方法で熟成させます。
なお、シェリーのタイプの一つフィノの場合は、ワインの表面にフロールと呼ばれるシェリー酵母の白い膜を繁殖させ、シェリー香といわれる特有の芳香を付けさせます。淡い麦わら色で、アーモンドのような香り、辛口で軽い口当たりのシェリーです。オロロソも有名ですが、こちらはフロールはなく、最初から酸化熟成をしたもの。辛口で色は濃く、香り豊なコクのあるシェリーです。
シェリーは、保存性が高く、100年の時を経たものもあります。
辛口は食前酒、甘口は食後のデザートワインとして飲まれています。
ポートワイン、マディラワインと並んで、世界の3大フォーティファイド・ワインといわれています。
なお、シェリーの空き樽は、スコッチ・ウイスキーを貯蔵する樽として昔から使われています。

フォーティファイド・ワイン

酒精強化ワインのことです。フォーティファイド・ワインは、ワインの醗酵段階又は醗酵終了後にブランデー等を加えて、アルコール度数を高めたワインです。
味にコクを持たせると共に日持ちするように造られたお酒です。
甘口と辛口があり、一般的に辛口はアペリティフ(食前酒)として、甘口はデザート用として飲まれています。
シェリー、ポートワイン、マディラワインは、世界の3大フォーティファイド・ワインといわれています。

フレーバード・ワイン

ワインの中に薬草、香草、果汁、糖類などを加えたワインをいいます。
イタリアのベルモットは香草系の代表、スペインのサングリアは果汁系の代表です。

ベルモット

白ワインをベースにして、これにブランデーを加え、苦ヨモギに肉桂(シナモン)など、数十種類の草根木皮から抽出された植物成分で芳香を付けたフレーバードワインです。
イタリア(北部のピエモンテ州)、フランスが代表的な産地ですが、現在では、スペインをはじめ、世界各国で造られています。
甘口のイタリアン(スイート・ベルモット。カラメルで着色されたロッソ、着色されていない黄金色のビアンコがある。)、辛口のフレンチ(ドライ・ベルモット。糖分は少なく、色は無色に近い。)ともいわれています。
アルコール分は、16~18度くらいです。
食前酒として、また、カクテルなど、幅広く使われています。

ポートワイン

ポルトガル産の甘くて、コクのあるデザートワインです。
ポルトガルのドウロ川上流の法定区域内で栽培された地元品種のぶどうを原料として製造。ガイアという町に運んで熟成、対岸の町オポルト港から積み出されるフォーティファイド・ワインです。 この要件をクリアしたものだけが、ポートの名称を付けることができます。この港の名前からポートの名前が生れました。
ポートの原料となるぶどうは、強烈な太陽と乾燥した気候のため、糖分は高く、醗酵過程でまだ糖分が残っている段階でブランデーを加え、アルコール度数を約20%くらいとし、醗酵を止めます。このことから、ぶどうの成分が残った自然な甘みとフルーティさを味わえます。
ポートワインのタイプには、(1)白ぶどうで造る軽めのホワイト・ポート。辛口から甘口まで。(2)美しいルビー色のルビー・ポート。(3)ホワイト・ポート、ルビー・ポートを更に長期熟成し、平均熟成年数がラベルに表示されるトウニー・ポートなどがあります。
ポートワインは、長期の保存、熟成に耐えるお酒で、20年、30年、40年と、10年単位で熟成年数が表示されます。
ビンテージ・ポートは、ぶどうの当たり年に製造されたポートワインで、その年号を付したものをいい、ポートの最高級品となります。
ポートワインの生産、貯蔵、品質は、法律で厳しく規定されており、ポートは1756年に世界で最も早くぶどうの栽培地域が限定されたワインです。
ポートワインは、シェリー、マディラワインと共に、世界の3大フォーティファイド・ワインといわれています。

マディラワイン

ポルトガルのリスボンから南西へ約900Kmの大西洋の小島、ポルトガル領のマディラ島で造られるフォーティファイド・ワインです。
マディラ島で造られる黒ぶどう、白ぶどうを使用。ブランデーを添加して醗酵を止める時期によって甘さの加減を調整します。その後、熟成と風味付のため加熱室に入れ、約50度で数カ月間貯蔵し、冷却、澱引きを経て、3年以上樽熟成させます。
色は、淡い琥珀から濃い茶褐色まで。甘口、辛口、様々な製品があり、極めて香りの高いワインで、100年を超える歳月にも耐えるといいます。
食前酒や食後酒として飲用されるほか、料理用としても人気があります。
マディラワインは、ポートワイン、シェリーと共に、世界の3大フォーティファイド・ワインといわれています。

マドリード協定

1891年(明治24年)にスペインの首都マドリードで締結された「原産地名称」に関する協定で、お酒をはじめ、あらゆる商品の原産地の虚偽表示を禁止することを目的とした協定です。
わが国は、1952年(昭和27年)の平和条約締結後、マドリード協定への参加を義務付られ、同協定を批准しています。
シェリー、ポート、シャンパン(シャンパーニュ)、コニャックなどの名称は、この協定により保護されているのです。

マラガ

スペイン南部、アンダルシア州南部の地中海の西端に位置する港町マラガ地域で造られる甘口で色の濃いデザートワインです。
天日乾燥させた糖度の高いぶどうや濃縮したぶどう果汁を原料として醗酵させて造ります。
独特な甘さがあり、アルコール分は、15~23度くらい、赤、白があります。

マルサラ

地中海に浮かぶイタリアのシシリー島西部で造られるフォーティファイド・ワインです。
ぶどうは、地元品種のみを使用。一般的には白ワインにブランデー、濃縮ぶどう果汁、甘口ワインを加えて、樽で熟成させて造られます。アルコール分は17~18度です。
中には、数十年間熟成させるものもあります。
製菓用や料理用としても使われます。
マルサラは、シェリー、ポート、マディラの三大フォーティファイド・ワインに次ぐワインといわれています。